漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

スポンサーリンク

生薬名(か~こ)

胡黄連

○胡黄連(こおうれん) インドやチベットなどヒマラヤ地方の高山地帯に分布するゴマノハグサ科の多年草コオレン(Picrorrhiza kurrooa)の根茎を用いる。そのほか同属植物の西蔵胡黄連(P.scophulariaeflora)なども利用される。薬用としては地上部が枯れた…

牛黄

○牛黄(ごおう) ウシ科の動物ウシ又はスイギュウの胆嚢や胆管の中にできた結石を用いる。ウシは新石器時代にはシリア・エジプトなどですでに家畜化されていた。日本でも古代から役用、食用に用いられた記録があるが、仏教の伝来とともに殺生が禁じられ食べ…

香料

○香料 一般に芳香があり生活に役立つ物質を香料という。時代や習慣などにより、その定義は明らかではない。香料のことを英語でパフュームというが、この語源は「薫ずる」という意味で、古くは宗教儀式の際に樹木を火で焚いたのが香料の起源と考えられている。…

藁本

○藁本(こうほん) 中国中南部に分布するセリ科の多年草コウホン(Ligusticum sinense)や中国北部に分布する同属植物のムレイセンキュウ(L.jeholense)などの根および根茎を用いる。 日本ではセリ科のヤブニンジン(Osmorhiza aristata)や中国原産のセリ…

厚朴

○厚朴(こうぼく) 中国の南部を原産とし中国の各地に分布しているモクレン科の落葉高木カラホウ(Magnolia officinalis)や凹葉厚朴(M.offcinalos var.biloba)の幹や枝の樹皮を用いる。日本ではホウノキ(M.obovata)が利用されている。 中国産では根に近…

粳米

○粳米(こうべい) インド北部から中国の雲南省を原産とし、アジアおよび世界各地で食用として広く栽培されているイネ科のイネ(Oryza sativa)の穀粒(種仁)、すなわちうるち米を玄米にした状態で用いる。生薬名では、もち米の穀粒を粳米、両者とも全草を…

香附子

○香附子(こうぶし) 全世界の温帯に分布し、日本でも関東以西に自生するカヤツリグサ科の多年草ハマスゲ(Cyperus rotundus)の根茎を用いる。おもに砂浜や川原の砂地に生えるが、畑や公園の雑草として嫌われている。 中国の植物名は莎草といい、生薬では地…

猴棗

○猴棗(こうそう) インド、マレーシア、中国南部に生息するサル科のアカゲザル(Macaca mulatta)の内臓結石を用いる。アカゲザルはベンガルザルとも呼ばれ、ニホンザルに似るが尾が長く、灰茶色の体毛で覆われている。森林に群居し、野草や木の実、昆虫な…

葒草

○葒草(こうそう) アジア大陸の温暖な地域を原産とするタデ科の一年草オオケタデ(Polygonum orientale)の全草を用いる。生薬では花序を葒草花といい、果実を水葒草子という。 オオケタデは日本にも古くから伝来し、観賞用に花壇や庭に植えられたが、今日…

紅豆蔲

○紅豆蔲(こうずく) 中国南部や台湾、熱帯アジアに分布するショウガ科の多年草ナンキョウソウ(Aloinia galanga)の果実を用いる。根茎は大良姜と呼ばれ、香辛料としても用いられている。 開宝本草に紅豆蔲は高良姜の子とあるのは誤りである。広西省の一部…

香辛料

○香辛料 香辛料は植物の種子や果実、葉、根、樹皮などを乾燥し、その芳香や風味、絡み、色合いを飲食物に付加する目的のものである。香辛料の基本的な作用として矯臭作用、賦香作用、辛味作用、着色作用があり、同時に防腐作用もある。すなわち肉や魚などの…

降真香

○降真香(こうしんこう) 現在、降真香の基原植物にはマメ科のダルベルギア・オドリフェラ(Dallbergia odorifera)の根の心材をあてる場合と、ミカン科のオオバゲッケイ(Acronychia oedunculata)の心材や根をあてる場合とがある。 降真檀は中国の広東省の…

紅参

○紅参(こうじん) ウコギ科多年草オタネニンジン(Panax ginseng)の根を蒸した後に乾燥したものを用いる。せいろで2~4時間蒸した後に熱風乾燥すれば、赤褐色で半透明の人参となるため、これを紅参という。 日本で生産される人参はほとんどが紅参に加工…

紅娘子

○紅娘子(こうじょうし) 中国南部、インド、マレーシアなどに分布するセミ科のハグロゼミ(Huechys sanguinea)の乾燥した全虫を用いる。紅娘子は神農本草経に収載されている樗鶏としばしば混同されているが、現在では樗鶏は全く別の昆虫で、ハゴロモ科のシ…

香薷

○香薷(こうじゅ) 日本をはじめアジアの温帯に広く分布するシソ科の一年草ナギナタコウジュ(Elsholtzia ciliata)の開花期の全草を用いる。 中国では中国、朝鮮半島、ウスリー地方に分布する同属植物の海州香(E.splendens)を用いる。日本産や韓国産はお…

唅士蟆

○唅士蟆(ごうしま) 中国の寒い地方に生息するアカガエル科の中国林蛙(Rana chensinensis)、黒竜江林蛙(R.amurensis)の内臓を除いたものを乾燥して用いる。雌の輪卵管を乾燥したものを唅蟆油という。ちなみに唅蟆油は古代中国の八大珍味の一つとされて…

光慈姑

○光慈姑(こうじこ) 本州の福島県以南、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸に分布するユリ科の多年草アマナ(Amana edulis)の鱗茎を用いる。チューリップと近縁の野生種であり、鱗茎は古くから食用にされ、食べると甘いためアマナ(甘菜)の名がある。 生薬名…

紅景天

○紅景天(こうけいてん) 中国のチベット自治区、四川、青梅、甘肅、雲南省やロシアのシベリアの海抜2000~5000mの高地に分布するベンケイソウ科の多年生植物、紅景天(Rhodiola sacra)などの全草を用いる。 ロディオラ属はヨーロッパには200種…

高貴薬

○高貴薬(こうきやく) 高貴薬とは非常に高価であり、容易に手に入りにくい薬物のことである。今日、ワシントン条約で規制されている野生動物からの生薬も多く、今後は代用品の開発を検討することも必要であろう。またこれらの生薬には贋偽品がしばしば出回…

合歓皮

○合歓皮(ごうかんひ) 日本各地、中国、東南アジアなどに広く分布するマメ科の落葉高木ネムノキ(Albizzia julibrissin)の樹皮を用いる。花や花蕾は合歓花、合歓米という。 かつて日本ではニシキギ科のマユミの樹皮が代用されたこともある。暗くなると眠る…

蛤蚧

○蛤蚧(ごうかい) 中国南部の広西省やベトナム、タイなどに生息する爬虫類のヤモリ科オオヤモリ(Gekko gecko)を用いる。体長は20cm余りもある大きなヤモリで、山間の岩場や樹木の穴、壁の上などに生息し、夜行性でおもに昆虫などを捕食している。オオ…

紅花

○紅花(こうか) エジプト原産のキク科の二年草ベニバナ(Carthamus tinctorius)の管状花の乾燥したものを用いる。薬用としては開花初期の黄色の多いときの花を、そのまま風乾したものを用いる。 古くから南ヨーロッパ、中近東、インド、中国などで栽培され…

香櫞

○香櫞(こうえん) インド原産のミカン科の常緑低木シトロン、すなわちマルブッシュカン(Citrus medica)の成熟果実を用いる。シトロンは直径が10cm以上の大果で、熟すと橙黄色になり、よい香りがする。 中国ではシトロンを枸櫞というが、日本ではレモ…

膠飴

○膠飴(こうい) 粳米または糯米を蒸したのち、麦芽のアミラーゼを用いてデンプンを分解し、糖化させて製した飴である。膠飴には軟らかいものと固形のものとがあり、軟らかいものは黄褐色、半透明の濃厚な水飴状であり、固形のものはこの水飴を攪拌し、空気…

玄明粉

○玄明粉(げんめいふん) 芒硝を風化、乾燥させて得られる白色の粉末をいう。芒硝の主成分は含水硫酸ナトリウム(Na2SO4・10H2O)であるが、空気中で風化されると結晶水を失い無水硫酸ナトリウム(Na2So4)に変化する。これは玄明粉あるいは風化硝という。 …

拳柏

○拳柏(けんぱく) 日本各地および台湾、朝鮮半島、中国、インドなどに分布し、岩壁などに生えている常緑シダ植物イワヒバ科のイワヒバ(Selaginella tamariscina)の全草を用いる。岩場に生えて、針葉樹のヒバの葉に似ていることからイワヒバの名がある。 …

現之証拠

○現之証拠(げんのしょうこ) 日本各地、台湾、朝鮮半島、中国などに分布するフウロソウ科の多年草ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)の全草を用いる。日本の代表的な民間薬であるが、中国では知られていない。 江戸時代初期から民間で用いられ、ゲンノ…

ゲンチアナ根

○ゲンチアナ根 ヨーロッパ原産でスペインからトルコまでの亜高山帯に分布しているリンドウ科の多年草ゲンチアナ(Gentoana lutea)の根および根茎を用いる。 植物学上、リンドウと同じ仲間であるが、ゲンチアナは高さ2mにも達する大型植物で、根も大きい。…

芫荽

○芫荽(げんすい) 地中海東部沿岸が原産とされるセリ科の一~二年草コエンドロ(Coriandrum sativum)の全草を用いる。現在では香料植物として東欧や東アジアなど世界各地で栽培されている。 和名のコエンドロはポルトガル語に由来し、中国では張騫が西域か…

芫青

○芫青(げんせい) 中国の各地に分布するツチハンミョウ科のアオハンミョウの一種である緑芫青(Lytta caraganae)の乾燥した全虫を用いる。 緑芫青は体長1~2cmくらいの細長い昆虫で、体は緑色あるいは藍緑色で光沢がある。かつて日本薬局方に収載され…