漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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生薬名(は~ほ)

蓽茇

○蓽茇(ひはつ) 東南アジアに分布するコショウ科のつる性常緑木本植物ヒハツ(piper longum)の未熟な果穂を用いる。ヒハツは長い房になったまま用いるのでナガコショウとも呼ばれている。 現在、カレー粉などの香辛料として現地の人しか用いていないが、ギ…

蓽澄茄

○蓽澄茄(ひっちょうか) ジャワ原産で東南アジア、インドなどに分布するコショウ科のつる性常緑木本植物ヒッチョウカ(Piper cubeba)の果実を用いる。これをクベバ実ともいう。そのほか中国南部、台湾、インドネシアなどの東南アジアに分布するクスノキ科…

砒石

○砒石(ひせき) ヒ素を含む生薬には雄黄、雌黄、砒石、砒霜、石譽などがある。砒素の「砒」とは天然に産する無水亜ヒ酸(三酸化ヒ素)の砒華鉱石、つまり砒石のことである。 しかし、現在では硫化物の鶏冠石やヒ化鉱物の石譽(硫砒鉄鉱:FeAsS)などを加工…

榧子

○榧子(ひし) 中国の揚子江以南に分布する常緑高木シナガヤ(Torreya grandis)の種子を用いる。日本では同属植物のカヤ(T.nucifera)を榧と書いているが、本当の榧は日本には自生していない。ただし日本や韓国ではカヤの種子を榧子の代用にしていたことも…

萆薢

○萆薢(ひかい) 日本の各地や中国大陸に分布するヤマノイモ科のつる性の多年草オニドコロ(Dioscorea tokoro)やタチドコロ(D.gracillima)などの根茎を用いる。そのほか中国では粉背署蕷、叉心署蕷、繊細署蕷などの根茎も用いている。 オニドコロやタチド…

繁縷

○繁縷(はんろう) 世界各地に広く分布するナデシコ科の越年草コハコベ(Stellaria media)の全草を用いる。一般にコハコベとミドリハコベ(S.neglecta)を合わせてハコベと称し、いずれも薬用にできる。春の七草の一つで若い茎や葉は食用とされる。またヒヨ…

板藍根

○板藍根(ばんらんこん) アブラナ科に属するホソバタイセイ(Isatis tinctoria)やタイセイ(I.indigotica)、キツネノマゴ科のリュウキュウアイ(Storobilanthes flaccidifolius)の根茎および根を用いる。これらの葉や枝葉は大青葉、精製された藍色の色素…

斑蝥

○斑蝥(はんみょう) 中国各地に分布するツチハンミヨウ科の昆虫、南方大斑蝥(Mylabris phalerata)やヨコジマハンミョウ(M.cihorii)の乾燥した全虫を用いる。 南方大斑蝥は体長1.5~2cmくらいの細長い昆虫で、背には黄色と黒の縞模様があり、大豆…

半辺蓮

○半辺蓮(はんぺんれん) 日本の各地、朝鮮半島、中国、東南アジアなどに分布するキキョウ科の多年草ミゾカクシ(Lobelia chinensis)の全草を用いる。中国では花が下方だけに広がるために半辺蓮と呼ばれ、日本では田んぼの畦道などで溝が隠れるほど繁殖する…

反鼻

○反鼻(はんび) クサリヘビ科マムシ属のマムシ(Agkistrodon halys)の内臓を除去した全体を用いる。マムシは体長50cm前後で、全体は褐色で黒褐色の円形の斑紋が少しずれて並び、頭は小さく三角形である。日本全土に生息する唯一の毒蛇で、水辺に近い草…

胖大海

○胖大海(はんたいかい) インドから東南アジアにかけての熱帯に分布するアオギリ科の落葉高木ハンタイカイ(Sterculia scaphigera)の種子を用いる。ベトナム、タイ、インドネシア、マレーシアなどで産するが、ベトナム産の品質が最もよいとされている。 乾…

蕃石榴

○蕃石榴(ばんせきりゅう) 熱帯アメリカ原産で、熱帯および亜熱帯の世界各地で栽培されているフトモモ科の常緑小高木バンジロウ(Psidium guajava)の果実や葉を用いる。生薬では未成熟の果実を番石榴乾といい、葉を番石榴葉という。 バンジロウは紀元前か…

半枝蓮

○半枝蓮(はんしれん) 中国の各地、台湾などに分布し、湿地に生えるシソ科の植物スクテラリア・バルバータ(Scutellaria barbata)の全草を用いる。コガネバナ(生薬名:黄芩)やタツナミソウと近縁植物である。中国の江蘇省地域の民間薬で、古い本草書には…

半夏

○半夏(はんげ) 日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するサトイモ科の多年草カラスビャクシ(Pinellia ternata)の球茎を用いる。半夏の名は夏の半ばに花が咲く(そのころに採取する)ことに由来し、カラスビャクシの名は仏炎の形をビャクシに例えたもので…

蕃杏

○蕃杏(ばんきょう) 日本の海岸をはじめ、太平洋沿岸の各地の砂地に分布するツルナ科の多年草ツルナ(Tetragonia tetragonoides)の全草を用いる。ツルナの果実は海流に乗って分散するため、東南アジアやオーストラリア、南米などにも広く分布している。 茎…

馬蘭子

○馬蘭子(ばりんし) 中国の北部から東北部、朝鮮半島に分布するアヤメ科の多年草ネジアヤメ(Iris pallasii)の種子を用いる。神農本草経には蠡実、名医別録には茘実とある。根は馬蘭根、花は馬蘭花、葉は馬蘭葉といい、これらも薬用とする。花が小型のアヤ…

葉蘭

○葉蘭(はらん) 中国中南部の地方原産とするユリ科の常緑多年草ハラン(Aspidistra elatior)の根茎を用いる。古い時代に日本に渡来したとされているが、鹿児島県の黒島に自生地があり、ここが原産地とも考えられている。ハランはバレン、バラン、ヒトツバ…

馬明退

○馬明退(ばめいたい) カイコガ科のカイコ(Bombyx mori)の幼虫の脱皮した抜け殻を用いる。カイコは完全に家畜化された昆虫といわれ、人間が飼育しなければ絶滅するといわれている。カイコの祖先は桑畑の害虫であるクワコという説もあるが、はっきりしてい…

浜防風

○浜防風(はまぼうふう) 日本各地をはじめ、オホーツク海沿岸から台湾にかけての海岸の砂地に分布するセリ科の多年草ハマボウフウ(Glehnia littoralis)の根および根茎を用いる。ハマボウフウの新茎でもやし状になったものは酢の物や刺身のつまなどとして…

馬勃

○馬勃(ばぼつ) 中国各地に分布するキノコの一種ホコリタケ科の植物、脱皮馬勃(Lasiosphaera fenzlii)や大頽馬勃(Calvatia gigantea)<紫頽馬勃(C.lilacina)の子実体を用いる。 日本に産するオニフスベ(L.nipponica)のように大きなまんじゅうの形を…

馬宝

○馬宝(ばほう) ウマ科のウマ(Equus caballus)の胃腸内にできた結石を用いる。鮓荅とか馬糞石とも呼ばれている。直径10cmぐらいの球形あるいは卵円形で、重さは重いものでは2.5kgのものもある。 表面はやや青みがかった灰白色で光沢があり、断面…

馬鞭草

○馬鞭草(ばべんそう) 本州以南の日本各地、世界中の温帯から熱帯に広く分布しているクマツヅラ科の多年草クマツヅラ(Verbena officinalis)の全草を用いる。野原や道端に自生しており、開花期に採取して乾燥する。 全草の成分としてフラン誘導体のベルベ…

ハーブ

○ハーブ ハーブとは、ラテン語の「草」に由来する言葉で、一般にはヨーロッパで料理や治療などに用いられている有用植物をいい、独特の芳香や香味があり、香草、薬草などとも訳されている。かつて東南アジアなどから輸入されていた香辛料をスパイスと呼ぶの…

母子草

○母子草(ははこぐさ) 日本および東アジアに分布するキク科の多年草ハハコグサ(Gnaphalium affine)の全草を用いる。ハハコグサは道端や田畑で普通にみられる雑草で、春の七草のひとつの「ごぎょう(御行)」とは餅花と呼ばれている。 ゆでると野菜として…

馬兜鈴

○馬兜鈴(ばとうれい) 関東以西、四国、九州などに分布するウマノスズクサ科のつる性多年草ウマノスズクサ(Aristolochia debilis)の果実を用いる。つるからぶら下がった果実の形が馬の首にかける鈴に似ていることからウマノスズクサあるいは馬兜鈴という…

白屈菜

○白屈菜(はっくさい) 日本各地、アジアの熱帯、ヨーロッパに広く分布するケシ科の越年草クサノオウ(Chelidonium majus)の全草を用いる。クサノオウのクサとは瘡、すなわち湿疹のことであり、別名にもタムシグサ、イボクサ、ヒゼングサなど皮膚疾患と関係…

菝葜

○菝葜(ばっかつ) 日本、朝鮮半島、中国、台湾に分布するユリ科のつる性低木サルトリイバラ(Smilax china)の根茎を用いる。日本ではサルトリイバラの別名をサンキライ(山帰来)という。しかし中国ではケナシサルトリイバラ(S.glabra)のことを山帰来と…

薄荷

○薄荷(はっか) 煮碗各地、朝鮮半島、東アジアに分布し、湿った河畔や原野に自生するシソ科の多年草ハッカ(Mentha arvensis)の全草を用いる。現在では北海道をはじめ、岡山・広島県などで栽培されている。ハッカの近縁植物としてヨーロッパ原産のセイヨウ…

八月札

○八月札(はちがつさつ) 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するアケビ科の落葉つる性本木アケビ(Akebi quinata)の成熟果実を用いる。そのほかミツバアケビ(A.trifoliata)や白木通(A.trifoliate var.australis)などの果実も用いる。日本では裂開する…

巴豆

○巴豆(はず) 中国南部から東南アジア、インドに分布するトウダイグサ科の常緑亜高木、ハズ(Croton tiglium)の種子を用いる。種子の大きさは1.5cm弱で、灰褐色の扁平楕円形である。巴蜀(四川省)に産することから巴豆といわれる。 種子の35~60…