漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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黄薬子

○黄薬子(おうやくし)

 本州の関東地方以西、朝鮮半島、中国、東南アジアなどに分布するヤマノイモ科のつる性多年草ニガカシュウ(別名:カシュウイモ Dioscorea bulbifera)の塊根を用いる。ニガカシュウにはヒゲ根を多く付けた大きな偏球形の塊根がある。この塊根は食用にもなるが、苦味が強いため灰汁でよく煮て水にさらし、十分にアクを抜く必要がある。苦味の少ない栽培品種にカシュウイモがある。

 ニガカシュウの塊根にはジオスゲニン、ジオスブルピンなどのステロイドサポニンが含まれ、エキスを用いた動物実験では心抑制作用、子宮興奮作用、抗甲状腺作用、抗菌・抗真菌作用などが報告されている。また黄薬子酒の胃癌、食道癌に対する抗腫瘍作用も注目されている。

 漢方では清熱涼血・清熱解毒・止血・散結の効能があり、鼻血、吐血、喀血などの出血、咽頭腫痛、皮膚化膿症、甲状腺腫などに用いる。また出血や腫れ物に、つき潰したものや粉末にしたものを患部に塗布する方法もある。なお中国ではキンポウゲ科センニンソウの植物名を黄薬子というので注意を要す。