漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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芫荽

○芫荽(げんすい)

 地中海東部沿岸が原産とされるセリ科の一~二年草コエンドロ(Coriandrum sativum)の全草を用いる。現在では香料植物として東欧や東アジアなど世界各地で栽培されている。

 和名のコエンドロはポルトガル語に由来し、中国では張騫が西域から持ち帰ったため胡荽とも呼ばれている。果実は香辛料のコリアンダー(生薬名:胡荽子)として知られている。

 一方、未熟な果実や青葉にはカメムシに似た独特の臭いがある。この臭いは普通の日本人には不快な悪臭と感じられるが、葉をとった葉茎を中国では香菜(シャンツァイ)、タイではパクチーと呼ばれ、東南アジア中南米の国々では肉や魚料理のつけあわせとして好まれている。最近では、日本でも中華料理や東南アジア料理などで全草が用いられるようになった。

 全草にはビタミンCやノニルアルデヒドなどが含まれ、不快臭の主成分はモノテルペン類のセルミン、デカナールといわれている。この臭いの成分は乾燥に弱く、生葉にしか含まれない。漢方では発汗・透疹・消食の効能があり、麻疹や消化不良などに用いる。とくに発疹の出にくい麻疹や風疹などに用い、発疹の出現を促進することによって内攻を予防し、全身症状の改善を行う。

 また発疹や丹毒に、芫荽を沸騰した湯に入れて1~2回沸騰させ、その湯気や熱湯でぬらしたタオルを皮膚に軽くあてる方法もある。近年、中国パセリ(芫荽)に体内の鉛が蓄積するのを抑制し、鉛中毒を緩和する作用があることが発表されて話題となっている。

 なお芫荽は子宮の筋肉を収縮させ、出産や堕胎を促進する民間薬として言い伝えられている。このため妊娠中は摂るべきではない。