漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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○酢(す)

 米、麦、高梁などの穀物や酒などを醸造して得られる酢酸を含む酸性の液体、酢のことである。醸造酢の作り方は、穀物などのデンプンや糖分原料を糖化し、アルコール発酵させた後、酢酸菌によって酢酸発酵させて作るものである。

 酢は酸拝した酒が起源と考えられ、かつて中国では苦酒と呼ばれ、日本でも「からさけ」といわれていた。紀元前5000年頃にバビロニアで樹液や果汁から酒やビネガーをつくったという記載があり、中国では周の時代に酢を司る役人がいたということが周札に書かれている。

 日本には応神天皇の時代、約5世紀のころには中国から酢の製法が伝えられていたといわれてる。米酢などの成分として酢酸(3~5%)、フマル酸、蟻酸、乳酸、コハク酸クエン酸などの有機酸のほか、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンなどのアミノ酸、糖類などを含み、複雑な酸味や香気がある。酢はその酸によって細菌類のタンパク質を変成させる性質があるため、殺菌作用や防腐作用があり、酢洗い、酢漬け、酢じめなどの料理方法に応用されたり、夏の食品保存にも利用される。

 また酸味はストレスを和らげ、酸味の刺激により、胃液の分泌を高め、食欲を増進させる。胃酸分泌の低下しているときには、胃酸の代わりにペプシンなどの消化酵素を活性化させ、タンパク質の消化を促進すると同時に、食物中の雑菌を殺す。

 酸味の感じ方は感情の変化を受けやすく、ストレスや情緒不安定の時には酸味の感覚が鈍るといわれる。また妊娠している人も酸味に対する味覚が鈍るため、酸味の強いものを好むようになる。また高血圧や動脈硬化の予防、水虫などの白癬菌に対する治療効果なども知られている。

 漢方では肝胃に入り、活血・止血・解毒の効能があり、産後のめまい、黄疸、盗汗、鼻血や吐下血、腫れ物などに用いる。咽に炎症があり、声が出にくいときには半夏と醋を卵殻の中に入れて沸騰させたものを冷やして服用する(半夏苦酒湯)。また金匱要略の中に黄汗の治療に黄耆・芍薬・桂枝を苦酒と水を混和した液で煎じる方法がある(黄耆芍薬桂枝苦酒湯)。腫れ物には大黄の粉末を酢で調えて塗布する。ちなみに薬用には古いほどよいといわれている。

 近年、鹿児島県福山町などで伝統的に作られてきた黒酢が注目されている。黒酢は玄米を原料として陶製の壺(アマン壺)の中で1年以上にわたって糖化・発酵させて熟成したもので、一般の米酢に比較するとアミノ酸の含有量が著しく多いという特徴がある。また、中国の鎮江でもち米を長期に熟成させて作られる香酢(香醋)沖縄県泡盛の製造過程でできるもろみを原料にしたもろみ酢なども健康食品として登場している。

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