漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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硇砂

○硇砂(どうしゃ)

 火山の溶岩の中や温泉に存在する天然のハロゲン化合物類の鉱物、塩化アンモン石の結晶を用いる。アンモニウムはエジプトのアンモンの神殿の付近で採れた岩塩ということに由来する。古くは腐敗尿から採取したが、現在ではアンモニア水を塩酸で中和したり、アンモニアソーダ法により炭酸ナトリウムを製造する際の副産物として得られる。

 硇砂は透明ないし半透明の繊維状、粒状の白色結晶であるが、純水の塩化アンモニウム(NH4Cl)は無色透明の結晶である。硇砂には塩化アンモニア無のほかに少量のFe、SO4、Ca、Mgなどが含まれている。塩化アンモニウムは塩安ともいわれ、肥料としてよく知られている。また医薬品として利尿剤、去痰剤として用いられたこともある。

 漢方では性味は鹹・苦・辛・温・有毒で、消積・消癥・軟堅散結の効能があり、腹部の腫瘤、嘔気、痰飲などに内服薬として、腫れ物、腫瘤、疣贅などに外用薬として用いる。嘔気や嘔吐、げっぷ、胸の痞えに平胃散に生姜とともに加える(硇砂丸)。