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漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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人参

○人参(にんじん)

 朝鮮半島中国東北部を原産とするウコギ科多年草オタネニンジン(Panax ginseng)の根を用いる。神農本草経に収載されている上薬の一つで、根が人の形に似ていることから人参といわれ、古くから不老長寿、万病薬として珍重されていた。現在、野生の人参は極めて稀である。ときに中国東北部吉林省や朝鮮で発見され、野人参といわれて非常に高価である。

 日本には天平時代に渤海国からの貢献品として初めて伝えられた。日本では高麗人参とか、朝鮮人参などと呼ばれ、江戸時代には非常に高価な薬であり、偽者や粗悪品が出回った。徳川幕府は事態の改善をはかるため、国内での栽培を推奨した。1728年、田村藍水らの努力により日光の御薬園栽培に成功し、その人参の種子が各藩に分与されたことからオタネニンジン(御種人参)の名がついた。現在でも長野県の丸子、福島県会津若松島根県大根島などで栽培されている。

 学名はパナックス・ジンセンといい、パナックスとは全てを治療する万能薬という意味であり、ジンセンは中国の発音による。栽培品では播種後4~6年の根を用いる。オタネニンジンと類似した植物として日本ではトチバニンジン(P.japonicus、生薬名:竹節人参)、北アメリカではアメリカニンジン(P.quinquefolium、生薬名:西洋参)、中国南部ではサンシチニンジン(P.notoginseng、生薬名:三七)が知られている。近年、中国で人参の代用品として用いられている党参はキキョウ科の植物の根である。ちなみに野菜のニンジンはセリ科の植物で、中国では人参といわずに紅蘿葡という。

 人参は部位や修治により様々な名称がある。掘り出して水洗いしたままの生の人参を水参といい、薬用酒の原料として用いる。細根を除いて皮を剥かずにそのまま乾燥したものを生干人参、細根を除いて85℃の湯に10分間つけて乾燥したものを御種人参、湯通しした後に周皮を剥いで乾燥したものを白参という。

 一方、切り落とされた細根を乾燥したものを鬚人参あるいは毛人参という。また、せいろで2~4時間蒸した後に熱風乾燥し、赤褐色になったものを紅参という。さらに湯通しや紅参を作るときに使った熱湯を煮つめたエキスを参精という。一般に、播種後4~5年目に間引きしたものは白参や湯通し人参などに加工され、6年間育成したものは紅参に加工される。

 成分には人参サポニンとしてジンセノシドRo、Ra~Rhなどが報告されており、そのほかパナキシノール、βエレメン、ゲルマニウムなどが含まれる。ジンセノシドなどによる薬理作用としてタンパク質、DNA、脂質などの合成促進作用、抗疲労・抗ストレス作用、強壮作用、降圧作用、血糖降下作用、認知症改善効果など数多くの研究結果が報告されている。

 漢方では代表的な補気薬であり、元気を補い、脾胃を健やかにし、神経を安定させ、津液を生じる効能がある。ただし、湯本求真の指摘するように「人参は万能の神薬に非ず」であり、一般に高血圧や実熱証の時には使用すべきではない。

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