漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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麦芽

麦芽(ばくが)

 中近東あるいは中国が原産とされている。イネ科のオオムギ(Hordeum vulgare)の発芽したを用いる。ただし、原産地については明らかではない。オオムギはヨーロッパでは有史以前から主食の一つで、世界各地で栽培され、日本にも3~4世に伝えられた。

 オオムギはグルテンを含まないためパンはできず、現在ヨーロッパでは食用ではなく、飼料やビール、ウイスキーの醸造用として栽培されている。日本でも押麦にして米と混炊して食用にすることもある。オオムギの果実(種子)を生薬では大麦という。オオムギを水に浸し、発芽して3~5mmになった後、取り出して日干しにしたものが麦芽である。

 麦芽にはデンプンや麦芽糖、タンパク質のほか、アミラーゼ、プロテアーゼ、マルターゼ、ビタミンB群、さらにアルカロイドのホルデニン、毛根には毒素のカンジシンが含まれている。カンジシンには筋弛緩作用があり、そのため家畜が中毒することがある。麦芽はデンプンの消化剤、ジアスターゼの原料として用いられている。

 漢方では消食・健胃・退乳の効能があり、消化不良や食欲不振、腹部膨満感、嘔吐、下痢、乳房の腫れなどに用いる。これらの効能は麦芽に含まれる消化酵素やビタミンB群などと関係していると思われる。

 消化不良や食欲不振には山査子や神麹などと配合する(焦三仙)。また滋養作用もあり、とくに小児の胃腸障害に適している(保和丸)。乳児では吐乳するときには麦芽だけを煎じて服用させる。眩暈症の治療に用いる半夏白朮天麻湯には胃腸を整える目的で麦芽が配合されている。何らかの理由で授乳を中断させ、乳房が張って痛むのを治療するときには、生麦芽を弱火で焦がした炒麦芽を、やや多量に煎じたり、粉にして服用する(麦芽湯)。