漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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白部

○白部(びゃくぶ)

 中国原産のビャクブ科のつる性多年草ビャクブ(Stemona japonica)の塊根を用いる。ビャクブは江戸時代に薬草として日本に渡来したものであるが、学名をステモナ・ヤポニカという。そのほか同属植物のタチビャクブ(S.sessulifolia)やタマビャクブ(S.tuberosa)などの塊根も用いられる。いずれも紡錘形に肥厚し、数個が集まっている。

 根茎にはアルカロイドのステモニン、ステモニジンなどが含まれ、有毒である。これらアルカロイドは呼吸中枢の興奮を抑制し、多量だと呼吸障害を起こす。また煎液には抗菌作用、真菌抑制作用があり、エタノールエキスにはシラミなどに対する殺虫作用があり、急性や慢性咳嗽、百日咳にも使用される。

 漢方では特に「肺癆咳嗽の要薬」として知られている。風邪などで咳が長く続くときには紫苑・白前・桔梗などと配合する(止嗽散)。肺結核などの肺陰虚で咳が続き、血痰のみられるときには生地黄・熟地黄・阿膠などと配合する(月華丸)。また回虫症や蟯虫症に対して内服、あるいは蟯虫には煎液益を注腸する。シラミや疥癬、トリコモナスなどでは煎液を局部に塗布する。かつて日本でも百部の煎じた液にヒモを浸したものを「しらみひも」と称し、腹に巻いてシラミやノミの予防に用いていた。