漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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白附子

○白附子(びゃくぶし)

 白附子は附子のひとつとして考えられると同時に、異なる基原を有する生薬である。朝鮮半島から中国の黒竜江・吉淋・遼寧省などに分布するキンポウゲ科多年草キバナトリカブト(Aconitum coreanum)の塊根を関白附という。また河南、陝西、四川、湖北省などに産するサトイモ科の多年草、独角蓮(Typhonium giganteum)の塊茎を禹白附という。両者はまったく異なる植物であるがいずれも白附子の基原植物とされている。

 禹白附にはシトステロールやシュウ酸カルシウムなどが含まれ、なるめと舌がしびれる。関白附にはヒパコニチンなどが含まれ、辛くて舌が麻痺する。漢方の効能はほぼ同じであるとされ、風痰を除き、寒湿を逐う作用があるとされ、脳卒中、顔面神経麻痺、眩暈、片頭痛、痙攣などの痰によって管が塞がった症状やリウマチなどの寒湿による関節の疼痛などに用いる。

 白附子には薬勢を上行させる性質があり、とくに顔面部の症状に適しているといわれている。関白附は寒湿を除く作用や止痛作用が強く、禹白附は風痰を除く作用が強く、とくに痙攣の治療に適する。この禹白附の効能は天南星に類似している。

 顔面神経麻痺や脳卒中による半身不随には僵蚕・全蝎と配合する(牽正散)。破傷風の痙攣症状に天麻・天南星などと配合する(玉真散)。そのほか白なまず(白癜風)や湿疹、掻痒症などに外用する。