漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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扁桃

○扁桃(へんとう)

 西アジア原産で、世界各地で栽培されているバラ科の落葉高木アーモンド(Prumus dulcis)の種子(仁)を用いる。アーモンドは仁を食用とする果樹で、約4000年前からヨルダン地方で栽培され、現在では主に地中海沿岸や米国のカリフォルニア栽培されている。

 明治に日本にも渡来したが、風土が適さず普及していない。中国では巴旦杏というが、これはペルシア語のバタムに由来するものである。日本では一般に扁桃といい、巴旦杏といえばスモモの品種の一つをいう。

 アンズの種子である杏仁と同じように、扁桃にも風味により苦味の苦扁桃と甘くて美味しい甘扁桃とに区別される。一般に薬用には苦扁桃を用い、甘扁桃はいわゆるアーモンドとして食用にする。

 苦扁桃には青酸配糖体のアミグダリン、加水分解酵素のエムルシン、脂肪油などが含まれる。甘扁桃にも脂肪油は含まれるが、アミグダリンは含まれていない。ヨーロッパでは古くから苦扁桃を水蒸気蒸留して得られる苦扁桃水を鎮咳薬として用いている。これは杏仁水とほとんど同じものである。ただし中国や日本では扁桃をあまり薬用として用いていない。