漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

スポンサーリンク

生薬名(さ~そ)

石蒜

○石蒜(せきそう) 日本の本州以南、中国の温帯に分布するヒガンバナ科の多年草ヒガンバナ(Lycoris radiata)の鱗茎を用いる。9月下旬、秋の彼岸のころに鮮やかな赤い花をつけるので彼岸花と呼ばれる。赤い花を意味するマンジュシャゲ(曼珠沙華)の別名も…

石韋

○石韋(せきい) 日本の関東以南及び朝鮮半島や台湾、中国南部、インドシナに分布するウラボシ科の常緑シダ植物ヒトツバ(Pyrrosia lingua)などの同属植物の葉を用いる。ヒトツバは暖地の乾燥した岩や葉に群生し、普通にみられる常緑のシダである。根は石韋…

西洋トチノキ

○西洋トチノキ バルカン半島のトチノキ科の落葉高木セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)の種子を用いる。欧米では街路樹として広く植栽され、パリのマロニエとして知られているのはこのセイヨウトチノキのことである。ちなみに英語名はホース・チェ…

西洋参

○西洋参(せいようじん) 北アメリカ原産で、カナダやアメリカの肥沃な森林に自生しているウコギ科のアメリカニンジン(Panax quinquefolis)の根を用いる。 17世紀末に薬用人参の効能がヨーロッパに紹介され、18世の初めにその論文を目にしたカナダの宣…

青木香

○青木香(せいもっこう) 関東以西、四国、九州及び中国に分布するウマノスズクサ科のつる性多年草ウマノスズクサ(Aristolochia debilis)などの根を用いる。 日当たりのよい山野に自生するつる性の植物で、つるからぶらさがった果実の形が馬の首にかける鈴…

青風藤

○青風藤(せいふうとう) ツヅラフジ科のオオツヅラフジ(Sinomenium actum)や華防己(Diploclisia chinensis)、アワブキ科のアオカズラ(Sabia japonica)などのつる性の茎をいう。 オオツヅラフジは単にツヅラフジともいい、日本の関東以西、四国、九州…

青皮

○青皮(せいひ) 日本ではミカン科の常緑高木ウンシュウミカン(Citrus unshiu)のまだ青い、黄熟する前の果皮を青皮という。成熟果実の果皮は陳皮といい、未熟な果実は枳実としても用いられる。中国ではオオベニミカン(C.tangerina)やコベニミカン(C.ery…

青黛

○青黛(せいたい) キツネゴマ科のリュウキュウアイ(Strobilanthes cusia)、マメ科のタイワンコマツナギ(Indigofera tinctoria)、アブラナ科の植物のホソバタイセイ(Isatis tinctoria)などの葉や茎に含まれる色素を用いる。 リュウキュウアイはインド…

青葙子

○青葙子(せいそうし) 熱帯の荒地に広く分布するヒユ科の一年草ノゲイトウ(Celosia argentea)の種子を青葙子という。ただし習慣的なケイトウ(C.cristata)の種子(生薬名:鶏冠子)も青葙子として市場に出ている。また神農本草経には青葙子を草決明と記…

蠐螬

○蠐螬(せいそう) コフキコガネ科のチョウセンクロコガネ(Holotrichia diomhalia)などの昆虫の幼虫を乾燥して用いる。この幼虫は体長1.5~2cmくらいでカブトムシの幼虫によく似ている。 中国では黒龍江省から長江以南に至る広い地域に分布している…

薺菜

○薺菜(せいさい) 日本の各地をはじめ北半球に広く分布しているアブラナ科の越年草ナズナ(Capsella bursa-pastoris)の全草を用いる。ナズナは春の七草の一つで、1月7日の朝に七草粥に入れる風習が残っている。 ナズナの語源は「撫菜」で、「めでる菜」…

青蒿

○青蒿(せいこう) 本州、九州、四国、朝鮮半島、中国に分布するキクカの二年草カワラニンジン(Artemisia apiacea)の全草を用いる。このほかアジア、ヨーロッパに広く分布するクソニンジン(A.annua)の全草を用いることもある。ただしクソニンジンの全草…

西河柳

○西河柳(せいかりゅう) 中国北部及びモンゴルを原産とするギョリュウ科の落葉小高木ギョリュウ(Tamarix chinensis)の葉のついた細い幼枝を用いる。日本には江戸時代に渡来し、切花や庭園樹として植栽されている。 水湿地を好み、枝は細く垂れ下がって全…

西瓜

○西瓜(すいか) 熱帯アフリカ原産のウリ科のつる性一年草スイカ(Citrullus vulgaris)の果実を用いる。中国へは中央アジアを経て11世紀に、日本には寛永年間に渡来したといわれている。スイカの果肉部分を西瓜といい、その汁を服用する。また厚皮の最外…

鈴蘭

○鈴蘭(すずらん) 北海道や本州の長野県・群馬県・朝鮮半島、中国、シベリアなどに分布するユリ科の多年草スズラン(Convallaria majalis var.keiskei)の根及び全草を用いる。 高山や山地の湿地帯に群生し、キミカゲソウ(君影草)という別名もある。現在…

豆豉

○豆豉(ずし) マメ科ダイズのの種子(Glycine max)を蒸して麹菌を用いて発酵させたものを乾燥して用いる。中国では淡豆豉あるいは香豉、淡豉などという。漢方生薬では一般に「豆豉」と称しているが、最近、健康食品として「豆鼓」という名称でも扱われてい…

津蟹

○津蟹(ずがに) 日本から台湾にかけて生息するイワガニ科のモズクガニ(Eriocheir japonicus)を用いる。中国の近縁種のシナモクズガニ(E.sinensis)を蟹として薬用にする。 モズクガニは河口の泥地や磯辺に生息する蟹で、甲羅は5cmくらいの四角形で体…

水蓼

○水蓼(すいりょう) 日本をはじめ北半球に広く分布するタデ科の一年草ヤナギタデ(Polygonum hydropiper)の全草を用いる。果実は蓼実という。河川や湿地など水辺に生え、中国名は水蓼という。 ヤナギタデはホンタデ、マタデとも呼ばれ、一般にタデといえば…

水揚梅

○水揚梅(すいようばい) 日本の各地や中国に自生しているバラ科の多年草ダイコンソウ(Geum japonicum)の全草を用いる。下葉(根生薬)の形が大根の葉に似ているためダイコンソウという。中国で水揚梅という植物には、このほかアカネ科の植物Adina rubella…

水蛭

○水蛭(すいてつ) 日本、中国、朝鮮半島の池や沼に生息するヒルド科のチスイビル(Hirudo mipponia)をはじめ、ウマビル(Whitmania pigra)、チャイロビル(W.acranulata)などをそのまま乾燥したものを用いる。 チスイビルは体長3~5cm、ウマビルは6…

水仙根

○水仙根(すいせんこん) 地中海沿岸に分布し、ギリシャ、中国を経て、日本に渡来したヒガンバナ科の多年草スイセン(Narcissus tazetta)の鱗茎を用いる。また花は水仙花という。ニホンズイセンはフサザキスイセンの変種といわれ、現在では伊豆や淡路島、越…

水菖蒲

○水菖蒲(すいしょうぶ) 日本をはじめ中国、東アジア、インドに分布し、池や沼などの水辺や水中に自生するサトイモ科の多年草ショウブ(Acorus calamus)の根茎を用いる。日本では菖蒲根という。 同じサトイモ科でよく似た植物にセキショウがあり、生薬名を…

水銀

○水銀(すいぎん) 常温で液体金属の水銀(Hg)を用いる。おもに天然の赤い辰砂鉱(HgS)を煉製するが、一部は天然水銀からとるものもある。古くから知られた金属のひとつであり、汞とは水銀のことを表す。水銀化合物の朱砂、霊砂、軽粉なども漢方では薬用に…

水牛角

○水牛角(すいぎゅうかく) 中国南部、東南アジアなどで飼育されているウシ科のスイギュウ(Bubalus bubalis)の角を用いる。黒褐色の湾曲した中空の角で、基部は方形~三角形になっている。 成分は犀角とほぼ同じであり、水牛角にも強心作用、血液凝固時間…

蕤核

○蕤核(ずいかく) 中国の内モンゴル自治区、山西・甘粛・河南省などに分布するバラ科の落葉低木、プリンセピア・ウニフローラ(Prinsepia uniflora)の成熟した果実の種子(核果)を用いる。 7~8月頃に直径1~1.5cmくらいの球形の果実がなり、黒く…

○酢(す) 米、麦、高梁などの穀物や酒などを醸造して得られる酢酸を含む酸性の液体、酢のことである。醸造酢の作り方は、穀物などのデンプンや糖分原料を糖化し、アルコール発酵させた後、酢酸菌によって酢酸発酵させて作るものである。 酢は酸拝した酒が起…

秦皮

○秦皮(しんぴ) 日本の本州中部以北に自生するモクセイ科の落葉高木トネリコ(Fraxinus japonica)などの樹皮を用いる。中国ではオオトネリコ(F.rhynchophylla)やヒメトネリコ(F.bungeana)などの樹皮を用いる。 これらの幹や皮にイボタロウムシが白色の…

人尿

○人尿(じんにょう) 健康人の小便の中間尿を用いる。とくに10歳以下の男子の小便を童便といい、良品とされている。また妊娠2~3ヶ月の健康な妊婦の尿を妊娠尿として用いることもある。 用法は新鮮な尿をそのまま1~2杯飲むか、薬湯に混ぜて飲む。成分…

沈丁花

○沈丁花(じんちょうげ) 中国原産のジンチョウゲ科の常緑低木ジンチョウゲ(Daphne odora)の花を用いる。中国では宋の時代から栽培されているが、今日では栽培種ばかりで、自生種は発見されない。日本に渡来した年代は不明であるが、室町時代にはすでに栽…

人中白

○人中白(じんちゅうはく) 人尿が自然に沈殿して固まってものを人中白という。 便器などの内側に長年に渡って凝固したものを削り取って夾雑物を除いて乾燥する。尿を放置しておくと尿中のpHが酸性からアルカリ性へと変化し、酸性のときには尿酸、尿酸塩、…