漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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枳実

○枳実(きじつ)

 日本ではミカン科のダイダイ(Citrus aurantium)やナツミカン(C.natsudaidai)などのミカン類の未成熟果実を枳実という。中国ではおもにカラタチ(Poncirus trifoliata)やダイダイなどの果実が用いられている。枳実よりも多く成熟直前の果実を枳殻、また成熟した果実の果皮をダイダイは橙皮、ナツミカンは夏皮と称している。

 本来、枳実は風などにより落ちた未成熟果実を拾い集めたものをそのまま、あるいは横割りにして天日で乾燥したものである。古いものをよいとする半夏・陳皮など六陳と呼ばれるものの一つとされている。

 枳実には芳香性のリモネンを主成分とする精油やフラボノイドのヘスペリジン、ナリンギンなどが含まれる。薬理的には胃腸の非生理的な収縮を抑制し、蠕動を強め、リズムを整える働き、さらに抗炎症作用、抗アレルギー作用などが認められる。

 漢方では理気・健胃・消積・去痰の効能があり、気を行らし、気の滞りによる硬結や痰による胸を痞えを消す作用がある。臨床的には胸満感や胸痛、腹満感や腹痛、便秘、食積、浮腫、胃下垂、脱肛などに応用される。また可能性炎症にも硬結を解する作用があるとして用いられる。

 米国ではダイダイの未熟果から抽出したエキス(シトラス)が、ダイエット素材として注目されている。シトラスに含まれているシネフリンなのサーモアミンが、交感神経系に働きかけ、脂肪細胞を刺激して脂肪酸を遊離して燃焼しやすくする働きがあると説明されている。