漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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地膚子

○地膚子(じふし)

 ユーラシア大陸に広く分布するアカザ科一年草ホウキギ(Kochia scoparia)の成熟果実を用いる。ホウキギ(箒木)とは茎全体を乾燥して束ね、草ぼうきに用いたことに基づく名である。

 ハハキギとも呼ばれ、近年は園芸植物として属名のコキアという名でも呼ばれている。秋田や山形地方では農家で栽培しており、若芽や若葉、種子を食用にしている。秋に小さ目の実を集めて30分ほど煮た後に水に浸して果皮を除いたもの(種子)をトンブリと称し、大根おろしやとろろを加えて醤油をかけて食べる習慣がある。

 果実は直径2mmくらいの偏平な球形である。種子は含油量が多く、成分に強壮作用のあるサポニンが含まれているといわれている。漢方では清熱燥湿・通淋の効能があり、排尿障害や膀胱炎、帯下、湿疹などに用いる。また他の利尿薬の作用を強めるため「響導(道案内)」薬ともいわれている。

 膀胱炎や尿道炎には猪苓・瞿麦などと配合し、湿疹や皮膚掻痒症などの皮膚病には黄柏・白蘇皮などと配合して用いる。また皮膚疾患には煎液で洗う方法もある。日本の民間では利尿薬のほか強壮薬としても有名で、脚気や下痢などに用いる。