漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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麦門冬

○麦門冬(ばくもんどう)

 日本、中国、朝鮮半島に分布するユリ科多年草ジャノヒゲ(Ophiopogon japonicus)の根の膨大部を用いる。ジャノヒゲの形は線形で叢生し、叢垂れ下がるのでリュウノヒゲとも呼ばれ、常緑のため庭園や公園の下草などに栽培されている。かつては薬用として大阪府河内長野や群馬・長野県などでも栽培されていた。秋になると美しい青紫の果実をつけるが、これは果皮を持たない種子そのものである。

 ジャノヒゲとヤブラン(Liriope platyphylla)は似ているが、ヤブランの果実は黒色である。ただしヤブランの根も土麦冬と呼ばれ、麦門冬の代用にされることもある。ジャノヒゲのひげ根の一部に、紡錘形に膨らんだところがあり、これを薬用にする。

 成分にはステロイドサポニンのオフィオポゴニンA~Dやホモイソフラボノイドのオフィオポゴノン、シトステロール、スチグマステロールなどが含まれ、抗炎症や去痰、血糖降下作用が報告されている。漢方では補陰・潤肺・止咳の効能があり、乾燥性咳嗽、粘稠痰、口渇、便秘、喀血、煩躁、動悸、不安感などに用いる。

 麦門冬は代表的な滋陰薬のひとつであり、去熱の咳嗽や陰虚症状に用いる。天門冬と効能がよく似ており、しばしば併用されて「二冬」と称されることもある。