漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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白屈菜

○白屈菜(はっくさい)

 日本各地、アジアの熱帯、ヨーロッパに広く分布するケシ科の越年草クサノオウ(Chelidonium majus)の全草を用いる。クサノオウのクサとは瘡、すなわち湿疹のことであり、別名にもタムシグサ、イボクサ、ヒゼングサなど皮膚疾患と関係した名がある。

 道端や石垣に生え、初夏に黄色い花が咲き、茎や葉を切ると橙黄色の乳液が出る。この乳液にはケリドニン、プロトピン、ケレリスリンなどのアルカロイドが含まれ、鎮痙・鎮痛作用などの薬理作用があるが、過量に服用すると頭痛、悪心、血圧降下、昏睡、呼吸麻痺などが出現する。旧ソ連の時代にはケリドニンを用いた抗癌剤(ウクライン)が開発され、今日でもヨーロッパで代替医療として用いられている。

 漢方では止痛・止咳・解毒の効能があり、胃痛、咳嗽、黄疸、皮膚疾患などに用いる。近年、中国ではシロップ剤として百日咳などの咳止めにも用いられている。日本では湿疹やイボ、タムシなどに生の汁を塗布したり、煎液で洗浄する民間療法がある。

 欧米ではグレーターセランディン(Greater Celandine)と呼ばれ、胆石症や消化不良の民間薬としてエキス化された製品も市販されているが、肝機能障害の副作用も報告されている。有毒植物であり、安易な使用は危険である。