漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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馬明退

○馬明退(ばめいたい)

 カイコガ科のカイコ(Bombyx mori)の幼虫の脱皮した抜け殻を用いる。カイコは完全に家畜化された昆虫といわれ、人間が飼育しなければ絶滅するといわれている。カイコの祖先は桑畑の害虫であるクワコという説もあるが、はっきりしていない。

 カイコは卵から孵化した後、幼虫は4回脱皮して熟蚕となり、繭を作って中で蛹に変わる。脱皮する前に、カイコは桑を食べずに胸から上を持ち上げたまま静止する時期があり、これを眠と呼んでいる。この時期に外皮の内側に新しい外皮ができ、頭のほうから古い外皮を脱皮する。薬用にはこの抜け殻を集めて日干しにする。

 漢方では止血・退翳の効能があり、鼻血や下血、子宮出血、歯肉の腫痛、咽頭炎、目翳などに用いる。日本漢方では先天性梅毒などの胎毒の治療に紅花・大黄などと配合する(馬明湯)。ちなみに、韓国では古くから民間療法としてカイコを糖尿病に用いていたが、近年、蚕幼虫の粉末に桑葉由来のDNJが多く含まれていることから、血糖の上昇を浴精することが報告され、糖尿病予防に対する健康食品(おかいこ散)として韓国政府自ら国際特許を取得している。