漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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別甲

○別甲(べっこう)

 スッポン科のスッポン(Amyda japonica)およびシナスッポン(A.sinensis)の背および腹の甲羅を用いる。一般に背の甲羅が使用される。背甲を煮詰めたニカワを別甲膠という。

 スッポンは淡水に生息し、背甲は淡い灰緑色の楕円形で亀甲がなくて中央が突起し、口は長く吻状に突き出ている。ちなみにベッコウ細工に用いるのはウミガメ科のタイマイ(玳瑁)の甲羅であるため、スッポンのことを土別甲ともいう。

 また中国ではスッポンを甲魚とか水魚、元魚と呼んで料理に用い、裙辺(エンペラ)といわれる甲羅の周囲が最もおいしいといわれている。水魚枸杞湯など枸杞子や黄耆、当帰、山薬などとスープにしたものは薬膳としても知られている。日本でもスッポン料理は強精食として知られ、肉はすっぽん鍋、卵巣は吸い物のたね、スープは瓶詰、缶詰などに用いられている。また滋養強壮のため生血や生肝などを飲む風習もある。

 漢方では補陰・軟堅・止痙の効能があり、結核など陰虚の発熱、マラリアなどによる肝脾腫や腹部腫瘤、小児のひきつけなどに用いる。別甲は亀板と同様に補陰・止痙の効能があり、虚熱による盗汗、熱病による痙攣ややひきつけにしばしば併用する。ただし、別甲のほうが虚熱を清する作用が強いとされている。

 一方、亀板には補血・止血や補腎・強筋骨の効能がある。別甲膠は別甲とほぼ同様の効能であるが、滋養作用は別甲膠のほうが別甲より強いといわれる。