漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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蜂蜜

○蜂蜜(ほうみつ)

 ミツバチ科の昆虫、ミツバチ(Apiscerana)がつくった蜜糖を用いる。ミツバチが花蜜を吸い、いったん前胃に入れ、巣に帰ってこれを吐き出すため、唾液中の酵素によって花蜜中のショ糖加水分解されて大部分が果糖およびブドウ糖の転化糖になる。

 濃厚な液体で色調は蜜源植物によって変わり、白色ないし淡黄色の白蜜、黄色ないし琥珀色の黄蜜とがある。夏季には半透明で光沢があるが、冬季には不透明となり、ブドウ糖の粒状結晶を析出する。

 成分には転化糖、ショ糖アミノ酸、有機酸、ビタミンB群、アセチルコリンなどが含まれる。漢方では潤肺・補中・滑腸・止痛・解毒の効能があり、慢性咳嗽や便秘、胃の疼痛、鼻炎、口内炎、火傷などに用いる。一般でも蜂蜜は滋養・潤燥作用のある健康食品として親しまれている。

 乾燥性咳嗽や全身の衰弱には滋養薬として地黄・人参・茯苓などと配合する(瓊玉膏)。また鎮咳に用いるほかの生薬を蜜炙するとよい。その他、八味地黄丸など滋養強壮の丸薬を蜜丸にするのは蜂蜜による矯味や成型の目的だけでなく、補養を加味している。

 大烏頭煎に蜂蜜を入れるのは疼痛の暖解と烏頭の毒性を緩和するためである。また便が堅くて出ないときには蜜を加熱して固めたものを坐薬として用いる(蜜煎導法)。

 ちなみに1歳未満の乳児に蜂蜜を食べさせるとボツリヌス菌の芽胞が腸管内において発芽・増殖し、乳児ボツリヌス症発症の危険性があるため、控えるように注意されている。