兎余粮
○兎余粮(うよりょう)
兎余粮は不純な褐鉄鉱あるいは沼鉄鉱のひとつであり、さまざまな形の塊や土状をしている。本来、余粮とは鉄質の殻の中に粘土質の核を有する鉱物のことであり、薬用には中の粘土を用いたとされる。その中の粘土が淡黄~灰色のものを兎余粮といい、鉄分を多く含んだ濃赤色のものを太一余粮と称していたと考えられている。ときに中の空洞のできてることもあり、振ると音がするため一般に鈴石とか鳴石、子持ち石などと呼ばれている。
この中の粘土の多くは加水ハロサイト(Al2o3・2Sio2・2H2O)である。本草綱目の中には「池沢に産出するものが兎余粮であり、山谷に産出するものが太一余粮であり、その中の黄濁した水が石中黄水であり、それが粉のように凝結したものが余粮であり、石のように乾燥して凝結したものが石中黄である」と記載されている。
古くから基原に関して諸説があって一定せず、現在の市場では兎余粮と太一余粮とを区別しない。また中国医学のテキストでは兎余粮の基原を褐鉄鉱とし、主成分はFe2O3で砂石有機物、リン酸塩などを含むとある。通常、無味・無臭で、水飛によって細末にしてから用いる。
漢方では止瀉、止血の効能があり、慢性的な下痢や子宮出血、帯下、痔などに用いる。傷寒論では赤石脂と配合した赤石脂兎余粮湯を下痢の治療に用いている。