漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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生薬名(た~と)

豚脂

○豚脂(とんし) イノシシ科動物のブタ(Sus scrofa domestica)の脂肪を用いる。ブタは古くから家畜として飼育されていた動物で、薬用にもあらゆる臓器が利用されている。ブタの脂肪はラードともいわれ、食用や石鹸の原料のほか軟膏基剤としても重要である…

登呂根

○登呂根(とろこん) 日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するナス科の多年草ホウズキ(Physalis alkekengi)の根を用いる。中国では根を酸漿根といい、全草を酸漿、がくを挂金灯という。日本では果実を登呂実という。 花の後ろにがくが肥大し、果実を包みこ…

土木香

○土木香(どもっこう) ヨーロッパ、北アジア原産で北米などでも野生化しているキク科の大型多年草オオグルマ(Inula helenium)の根を用いる。日本には江戸時代に薬用として渡来し、大和や信濃などで栽培されていたと伝えられている。 木香とはインド原産の…

土茯苓

○土茯苓(どぶくりょう) 中国からインドにかけて分布するユリ科のつる性落葉低木ケナシサルトリイバラ(Smilax glabra)の根茎を用いる。生薬名を中国では土茯苓というが、日本では一般に山帰来と呼んでいる。 ところで日本にはケナシサルトリイバラは自生…

独活

○独活(どっかつ) 日本では本州、四国、九州、中国などに分布するセリ科の多年草シシウド(Angelica pubescens)およびその近縁植物の根や根茎を用いる。日本産の独活(和独活)はウコギ科のウド(Aralis cordata)の根茎(宿根)のことをいい、側根は羗活…

土通草

○土通草(どつうそう) 日本の北海道から九州にかけて分布するラン科の大型の多年草ツチアケビ(Galeola septentrionalis)の果実を用いる。ツチアケビはナラタケと共生する腐生ランで、葉がなく、全体が黄褐色をしている。草丈は50~100cmで、秋に赤…

杜仲

○杜仲(とちゅう) 中国原産であるトチュウ科の常緑高木トチュウ(Eucommia ulmoides)の樹皮を用いる。日本産の和杜仲はニシシギ科のマサキ(Euonymus japonicus)であり、成分や薬効が異なり代用にはならない。最近では長野県の伊那谷や広島県の因島などで…

杜松実

○杜松実(としょうじつ) 日本の関東地方以西、朝鮮半島、中国に分布しているヒノキ科の常緑低木、ネズ(Juniperus rigida)の球果を用いる。ネズサシともいうが、葉の先が針のように尖っていて、この葉のついた小枝をネズミ穴に差し込んでおくとネズミが通…

菟絲子

○菟絲子(としし) 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するヒルガオ科のつる性一年草ネナシカズラ(Cuscuta japonica)の種子を用いる。そのほかハマネナシカズラ(C.chinensis)およびマメダオシ(C.australis)の種子も用いる。日本では中国産のハマネナシ…

吐根

○吐根(とこん) ブラジル南部を原産とし密林に自生するアカネ科の木本状の多年草トコン(Cephaelis ipecacuanha)の根を用いる。3年以上の株の値を乾燥させ、一定期間貯蔵したものを用いる。マレー半島やスリランカでも栽培されている。 成分のトコンアル…

杜衝

○杜衝(とこう) 中国の江蘇、省を産地とするウマノスズクサ科の多年草トコウ(Asarum forbesii)の根または全草を用いる。日本では近縁植物のカンアオイ(A.nipponicum)の根を杜衝あるいは土細辛という。トコウの根は近縁植物のウスバサイシン(生薬名:細…

土荊芥

○土荊芥(どけいがい) メキシコおよび西インド原産のアカザ科の一年草アリタソウ(Chenopodium ambrosioides)の花穂のついた全草を用いる。日本には天正年間に南蛮人によって伝えられ、ルウダソウの別名もある。アリタソウの名は佐賀県有田で栽培されてい…

土槿皮

○土槿皮(どきんぴ) 中国の浙江・安徽省などの高地に分布するマツ科の落葉高木イヌカラマツ(Pseudolarix amabills)の樹皮および根皮を用いる。カラマツに似た樹高40mに達する高木で、秋に鮮やかな黄色に染まるため金銭松とか金松の名がある。華東地方…

土瓜根

○土瓜根(どかこん) 日本、台湾、中国の各地に分布しているウリ科のつる性多年草カラスウリ(Trichosanthes cucumeroides)の根を用いる。 カラスウリは神農本草経では土瓜と呼ばれ、金匱要略に土瓜根という名で記載されているが、現在では一般に王瓜根と呼…

銅緑

○銅緑(どうりょく) 銅を湿った空気中に放置すると表面に緑色の銹ができる。この成分は塩基性炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2)である。また銅に酢酸の蒸気をかけるとやはり緑色の塩基性酢酸胴の銹ができる。これらの銹を銅緑という。 日本では一般に緑青と呼んでい…

藤梨根

○藤梨根(とうりこん) 日本各地、朝鮮半島、中国東北部に分布するマタタビ科の落葉つる性藤本サルナシ(Actinidia arguta)、シナサルナシ(A.chinensis)の根および根皮を用いる。シナサルナシはキウイの原種であり、中国ではキウイのことを獼猴桃という。…

桃葉

○桃葉(とうよう) 中国を原産とするバラ科の落葉小高木モモ(Prunus persica)あるいはノモモ(P.persica var.davidiana)の葉を用いる。モモの種子は桃仁、花および蕾は白桃花と称して薬用にされる。モモは多くの果実をつけることから木に兆と書き、日本で…

動物胆

○動物胆(どうぶつたん) さまざまな動物の胆嚢および胆汁を薬用に用いる。魚類では鯉魚胆やヤツメウナギの胆、爬虫類ではヘビの蛇胆、鳥類ではニワトリの鶏胆、哺乳類ではクマの熊胆、ブタの猪胆、ウシの牛胆などが薬用にされている。 近年、熊胆の入手が困…

橙皮

○橙皮(とうひ) ヒマラヤ原産のミカン科の常緑低木ダイダイ(Citrus aurantium)やアマダイダイ(C.sinensis)の成熟した果実の果皮を用いる。ダイダイの未成熟果実は枳実・枳殻として用いる。 ダイダイは奈良時代に日本に伝来し、古くはカムスとも呼ばれて…

桃仁

○桃仁(とうにん) 中国北西部を原産とするバラ科の落葉小高木モモ(Prunus persica)あるいはノモモ(P.persica var.davidiana)の核の中にある種子を用いる。花は白桃花、葉は桃葉と称して薬用にする。日本には古くから伝えられ、弥生時代の遺跡からモモの…

冬虫夏草

○冬虫夏草(とうちゅうかそう) 中国の四川・貴州・雲南省、チベット自治区などに産する蛾の幼虫に生えたキノコの一種を用いる。バッカクキン科のフユムシナツクサタケ(Cordyceps sinensis)と呼ばれる菌類で、とくにコウモリガ科の昆虫の幼虫に寄生する。 …

稲草

○稲草(とうそう) イネ科のイネ(Oryza sativa)の茎葉を用いる。コメはその粘性によって粳と糯に区別されるが、いずれの茎葉も稲草として用いる。一般にはもち米(糯米)を収穫した後の地上部を用いる。種子はうるち米を粳米、もち米を糯米といい、もち米…

刀豆

○刀豆(とうず) 熱帯アジア原産のマメ科のつる性多年草ナタマメ(Canavalia gladiata)の種子を用いる。ミャンマーや中国雲南省に自生し、インドや東南アジア、中国南部では栽培されて食用とされる。ナタマメや刀豆の名はさやの形が刀や鉈に似ていることに…

灯心草

○灯心草(とうしんそう) 日本全土、朝鮮、中国に分布し、水田の畦や湿地に自生するイグサ科の多年草イグサ(Juncus effusus)の茎および髄(灯心)を用いる。日本でもトウシンソウともいうが、古くからイあるいはイグサと呼ばれ、その茎は畳表や花むしろの…

党参

○党参(とうじん) 中国の山西・陝西・四川省などに産するキキョウ科のつる性多年草ヒカゲツルニンジン(Codonopsis pilosula)および同属植物の根を用いる。潞洲上党産の人参という意味である上党人参という名から党参と呼ばれていたが、清代になってウコギ…

硇砂

○硇砂(どうしゃ) 火山の溶岩の中や温泉に存在する天然のハロゲン化合物類の鉱物、塩化アンモン石の結晶を用いる。アンモニウムはエジプトのアンモンの神殿の付近で採れた岩塩ということに由来する。古くは腐敗尿から採取したが、現在ではアンモニア水を塩…

透骨草

○透骨草(とうこつそう) 透骨草の基原植物としてさまざまな種類の植物が利用されているが、一般にはトウダイグサ科のダイダイグサ(Speranskia tuberculata)やツリフネソウ科のホウセンカ(Impatiens balsamina)の全草が用いられる。ただしホウセンカには…

冬葵子

○冬葵子(とうきし) ヨーロッパ原産で世界各地に分布しているアオイ科の多年草フユアオイ(Malva verticillata)の種子を用いる。しかし、現在では、冬葵子として市場に流通しているものの中にはアオイ科の一年草イチビ(Abutilon avicennae)の種子も含ま…

当帰

○当帰(とうき) 日本では奈良県や北海道で栽培されているセリ科の多年草トウキ(A.acutiloba)の根を用いる。日本の本州中部より北の山地にはミヤマトウキ(var.iwatensis)が自生しており、日本で栽培されているのはこの栽培種のトウキ(日本当帰・東当帰…

唐辛子

○唐辛子(とうがらし) 南米原産で世界各地で栽培されているナス科の多年草トウガラシ(Capsicum annuum)やシマトウガラシ(C.frutescens)の成熟果実を用いる。唐芥子というが、日本には桃山時代のころにポルトガルから伝来し、中国にはそれより遅く明朝末…