桃仁
○桃仁(とうにん)
中国北西部を原産とするバラ科の落葉小高木モモ(Prunus persica)あるいはノモモ(P.persica var.davidiana)の核の中にある種子を用いる。花は白桃花、葉は桃葉と称して薬用にする。日本には古くから伝えられ、弥生時代の遺跡からモモの種子が発見されている。すでに平安時代から栽培されていたが、専ら花の観賞用だったといわれている。
果樹としての記録は江戸時代からであるが、当時の桃は小さく果肉が硬かったと考えられ、今日のような栽培品種は明治以後に導入されたものである。ただ薬用の桃仁としては、果物用の白桃や水蜜桃では種子が小さいため適さない。
桃仁の成分として脂肪油40~50%、青酸配糖体のアミグダリン、酵素のエムルシンなどが含まれ、薬理作用として抗炎症作用、鎮痛作用、血小板凝集抑制作用、綿溶系活性作用などが知られている。月経障害、腹部腫瘤、下腹部痛、神経痛、打撲傷、内臓の化膿症、便秘などに用いる。
漢方では活血・排膿・潤腸の効能があり、白桃花は利尿・緩下剤として浮腫や脚気、便秘の治療に、桃葉は浴湯料として皮膚病などに用いられる。