漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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橙皮

○橙皮(とうひ)

 ヒマラヤ原産のミカン科の常緑低木ダイダイ(Citrus aurantium)やアマダイダイ(C.sinensis)の成熟した果実の果皮を用いる。ダイダイの未成熟果実は枳実・枳殻として用いる。

 ダイダイは奈良時代に日本に伝来し、古くはカムスとも呼ばれていた。ダイダイという名は果実は枝についたまま数年(代々)も落ちないことにより、カムス(蚊無須)と名は干した皮を焚いて蚊よけにしたことによる。ちなみに果肉をしぼった汁をポン酢というのは、オランダ語のポンスから出ている。

 アロマオイルでは、ダイダイはビターオレンジとして有名で、花から得られた精油ネロリ(Neroli:橙皮油)、果皮からの精油はビターオレンジ、木の葉と小枝から抽出した精油はプチグレン(Petitgrain)と呼ばれている。

 果皮には主としてd-リモネンからなる精油やナリンギン、ヘスペリジンなどが含まれる。橙皮は西洋医学的に芳香性苦味健胃剤として苦味チンキや橙皮シロップの原料にも使われている。漢方では理気・健胃・去痰の効能があり、陳皮の代用として消化不良、二日酔いなどにも用いる。

 民間療法ではダイダイを酒に漬けた液で手や顔の荒れを治したり、果皮を干したものを煎じて車酔い、風邪、咳のときに服用する。また疝気や婦人の腹痛などに用いられた。