漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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紫花地丁

紫花地丁(しかじちょう)

 スミレ科の多年草ノジスミレ(Viola yedoensis)やスミレ(V.mandshurica)などの全草を用いる。紫花地丁の別名を地丁ともいうが、単に地丁といえばスミレ科の植物以外にもマメ科やリンドウ科の数種類の植物も基原として含まれる。

 ノジスミレの根にはフラボン配糖体やセロチン酸、粘液質が含まれているが、詳細は不明である。漢方では清熱解毒・消腫の効能があり、皮膚化膿症や瘰癧(頸部リンパ腺腫)、下痢、結膜炎などに用いる。皮膚化膿症で腫れて痛むときには金銀花・蒲公英などと配合する(五味消毒飲)。

 日本の民間でも癤や癰などの腫れ物の妙薬として知られており、とくに頭や背中の腫れ物に効果がある。また新鮮な全草をすりつぶした汁を服用したり、患部に外用することもある。蛇に噛まれたときにも同様に用いる。

 なお地中海沿岸地方を原産とするニオイスミレ(スイートバイオレット・Sweet V.odorata)は、ヨーロッパではよく知られたハーブである。上品な香りの花は香水の原料であり、その芳香成分としてパルモンやオイゲノールなどの精油が知られている。花には鎮静作用や去痰作用があり、不眠や癲癇、呼吸器疾患の治療のほか、浄血薬として、また歯肉炎や咽頭炎の口内洗浄液やうがい薬として用いられている。葉には炎症を抑える作用があり、罨法として眼炎や乳頭のただれに、浸剤は消化不良などに用いられている。