漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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木賊

○木賊(もくぞく)

 北半球の温帯に分布するトクサ科の常緑シダ植物トクサ(Equisetum hyemale)の茎あるいは全草を用いる。日本では中部地方以北の山中の湿地に自生し、茎は濃緑色でまっすぐに直立している。スギナと同属のシダ植物の一種で、園芸植物としても利用されている。

 トクサの表皮には多量の硬い無水ケイ酸が含まれ、これを木材や金属、骨や工芸品などの研磨に用いたため「研草」と呼ばれ、また木を傷めることから木賊の名がある。

 成分には無水ケイ酸、パルストリン、ジメチルスルフォンなどが含まれる。漢方では明目・退翳の効能があり、おもに眼科の治療薬として知られ、結膜炎など風熱による充血やかすみ目、角膜混濁、流涙症などに用いる。

 結膜炎など涙が止まらないときには菊花・夏枯草などと配合する(収れ涙飲)。日本の民間では収斂・止血薬として痔出血や腸出血、月経過多、下痢などに煎じて服用する。また浮腫や淋病のときの利尿剤としても用いる。そのほか痔や脱肛、眼病などに煎液で洗浄する方法もある。

 一般に欧米では、スギナをホーステイル(Horsetail)として利用しているが、トクサもホーステイルと呼ばれている。