漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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虎骨

○虎骨(ここつ)

 大型哺乳度物であるネコ科のトラ(Panthera tigris)の骨を用いる。トラはアジアに広く分布しているが、中国東北地方にはシベリア虎とか満州虎と呼ばれている東北虎、華南地方には華南虎が生息している。

 トラは体長約2m、全身は橙黄色で黒の横縞があり、狂猛な性質でほかの獣類を捕食する。シベリア虎はやや大型で毛が長いのに対し、華南虎は小型で縞模様の幅が広い特徴がある。虎骨として全身の骨を薬用にするが、とくに脛の骨を虎脛骨として重んじる。なかでもシベリア虎の中年の雄が最良とされている。虎骨を長時間にわたって煎じつめたものを虎骨膠という。

 主成分はリン酸カルシウムであるが、虎骨膠には抗炎症作用や鎮痛作用が報告されている。漢方では強筋骨・止痛・定驚の効能があり、四肢の関節痛や下肢の萎弱、麻痺、痙攣、ひきつけなどに用いる。リウマチや神経痛による関節や筋肉の痛みやしびれには木瓜・当帰などと配合する(舒筋丸)。老化により腰や膝がだるく、四肢のしびれや歩行障害のみられるときには熟地黄・牛膝などと配合する(虎潜丸)。また虎骨を蒸留酒に浸した虎骨酒や木瓜などと配合した木瓜虎骨酒も足腰の痛みや神経痛の治療薬としてよく知られている。

 かつて日本にも虎骨が配合されている舒筋丸活絡丸海馬補腎丸、健歩丸、虎骨酒などが輸入されていた。現在トラの生息数が減少しており、ワシントン条約でも虎骨の含まれる漢方薬は制限されている。そのため近年ではイヌ(狗)の狗骨などで代用されている。