漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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胡荽子

○胡荽子(こずいし)

 地中海東部沿岸を原産とするセリ科の一~二年生コエンドロ(Coriandrum sativum)の果実を用いる。全草は生薬として芫荽と呼ばれる。現在、インドやロシア、モロッコ、東欧諸国、アメリカなどで栽培されている。

 胡荽子は香辛料のコリアンダーとしても知られ、独特の芳香がある。コリアンダーという名は、ギリシャ語で南京虫という意味のコリスに由来し、事実、若い果実にはカメムシのような臭いがある。ヨーロッパや南米、インドなどで果実が香辛料としてよく利用され、ピクルスやカレー粉、ソーセージなどに用いられている。

 古代ギリシャ・ローマ時代から医薬のひとつとしてよく使われ、消化不良や腹痛、めまい、腎臓病、胆石の治療のほか、中世には媚薬としても有名であった。中国には漢代に張騫が西域から持ち帰ったといわれ、種子を食べると不老不死が得られるという伝説がある。日本には9世紀頃に伝えられ、コニシと呼ばれたこともあるが、臭いが日本人に好まれなかったため普及しなかった。和名のコエンドロはポルトガル語のコエントロに由来している。

 果実に含まる精油の主要成分はd-リナロールで、そのほかリモネンやピネンなども含まれている。漢方では透疹・健胃の効能があり、発疹しにくい麻疹や天然痘、食欲不振、痔核などに用いる。歯痛には煎じた液を口に含んだり、痔疾患に乳香などと混ぜたものを焼いて患部を燻す方法がある。