漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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虻虫

○虻虫(ぼうちゅう)

 アブ科のウシアブなど幾つかの種類のアブ(虻)の雌の全虫を乾燥して用いる。アブというのは、双翅目の昆虫のうち、ハエ、カ、ブユなどを除いたものを一括した呼称である。

 ハナアブなどは動物を刺したりしないが、ウシアブなどは家畜を刺して吸血するため害虫とされる。薬用には吸血性アブ類が用いられる。中国では複帯虻(Tabanusbivittatus)を用いる。ただし吸血するのはメスだけで、オスは花の蜜だけを吸う。

 体長により大型(18mm以上)のウシアブ系、中型(15mm前後)のシロフアブ系、小型(13mm以下)のヒメシロフアブ系に区別されている。

 薬理的に血液凝固阻止、溶血作用があると報告されている。婦人の月経異常や無月経、腹部腫瘤、打撲傷に用いる。動物性生薬のシャ虫・水蛭と同様、強い駆瘀血作用があり、しばしば配合される。

 漢方では消癥・活血化瘀・通経の効能があり、無月経や下腹部の硬満、瘀血による精神症状などに水蛭・大黄などと配合する(抵当湯・抵当丸)。腹部の腫瘤や無月経、皮膚の甲錯などには水蛭・シャ虫などと配合する(大黄シャ虫丸)。