漢方生薬辞典

約780種の生薬を五十音順に紹介。日本の漢方薬や伝統薬に配合されている和漢生薬、民間薬、ハーブなども紹介。

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曼荼羅華

曼荼羅華(まんだらげ)

 熱帯アジア原産で、中国南部に自生し、栽培されているナス科の一年草、チョウセンアサガオDatura metel)およびケチョウセンアサガオ(D.innoxia)の開花しはじめた花を用いる。日本には薬用として江戸時代に輸入され、キチガイナスビとも呼ばれた。

 中国では生薬名を洋金花といい、チョウセンアサガオを南洋金花、ケチョウセンアサガオを北洋金花という。また葉は曼荼羅葉、果実は曼荼羅子として薬用にする。

 これら植物の属名はダツラ属といわれ、熱帯アメリカ原産のヨウシュチョウセンアサガオ(D.stramonium)の葉はダツラ葉あるいはマンダラ葉として有名である。

 ダツラ属の植物にはトロパンアルカロイドのスコポラミン、ヒヨスチアミン、アトロピンなどが含まれ、総アルカロイドの量は花が最も多い。現在ではアトロピンやスコポラミンの原料にされている。

 アトロピンは副交感神経遮断作用を有し、平滑筋の痙攣を緩解させ、瞳孔を散大させ、涙腺や汗腺、消化管の分泌を抑制し、局所知覚神経抹消を麻痺ざる。また中枢神経系の機能をはじめは興奮させ、次いで麻痺させる。スコポラミンはアトロピン様の作用を有し、また強い催眠作用があり、興奮による不眠や乗り物酔いに有効である。

 中国の伝説的な名医、華陀は麻沸散という麻酔薬にこの洋金花を用いたといわれる。また華岡青洲は乳癌手術のときに曼荼羅花に草烏頭・当帰・天南星などを配合した通仙散で全身麻酔を行った。これは世界初の全身麻酔の成功例として高く評価されている。

 漢方では平喘・止痛・止痙の効能があり、喘息や関節痛、痙攣の治療に用いる。しかし毒性が強いため、現在ではほとんど臨床に用いられない。欧州ではダツラ葉を慢性気管支炎や喘息に喘息タバコとして用いている。